「パートナーシップセミナー(第2回)」開催レポート

令和元年「パートナーシップセミナー」

 

第2回「パートナーの笑顔と仕事の充実に一石二鳥!男性のための“使える”コミュニケーション講座」

<開催レポート>

令和元年11月9日(土)13時30分~16時

 

 

職場でも家庭でも、コミュニケーションがうまくとれずに、無駄なやり取り、イライラ、トラブルが発生していませんか?今回は、アドラー心理学に基づいた「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナルである熊野英一さんを講師にお招きし、職場や家庭のコミュニケーション改善について参加者の皆さんで考えました。

 

●コミュニケーションの基本は「言う」と「聞く」の2つだけ

私は株式会社子育て支援の代表で、保育のサービス等を提供しており、そこから広がって、アドラー心理学を研究・実践して、お伝えする仕事もしています。今日はアドラー心理学に基づいた夫婦、職場、子育てのコミュニケーションについてお話します。

 

最初にお伝えしますが、相手が誰であれ、コミュニケーションで大切なのは、①自分が言いたいことを伝える。②相手の意見を聞く。たった2つだけです。自分のことも分かってもらいたい。相手のことも分かろうとする。その両方が大切です。

さらに、誰かと良い関係を築くために大事なキーワードは心理的安全性です。簡単に言うとリラックスです。人がリラックスした状態でいると、そうでない時に比べて、3割生産性が上がるというデータもあります。今日も学びを深めるためにも、リラックスした心理的安全性を確保した場所にしたいと思います。

 

<グループワーク>(自己紹介)

名前。子供の頃、特に10歳くらいの頃になりたかった職業や憧れていた人。できるだけリアルに思い出して伝える。

 

●コミュニケーション改善の最大の目的は、ハッピーになること

最近、女性活躍推進、働き方改革とよく言われますが、うまくいっていない会社も多く、その理由は明確です。それは目的と目標と手段が混同され、何のための女性活躍や働き方改革なのかをしっかり話し合わないで、なんとなくやっている場合が多いからです。目的はゴール、目標はそこに至る道しるべ。目的と目標を分けて考えないと、目標ばかりが先行して、訳が分からなくなります。

コミュニケーション改善についても、わざわざ休みの日にこうやってセミナーに集まっている最終的な目的は、ハッピーになるためです。私たちは意外にこのことを忘れがちです。

職場でも家庭でもハッピーになるには、努力も練習も必要だと思いますが、幸せになるために生きているということを忘れずに考えていけば、自然と何をすべきかが分かってくるはずです。

 

<グループワーク>(アドラー心理学、簡易版のテスト)

30の設問にまる、さんかく、ばつで答えて、結果を数値化、グラフ化していくとライフスタイルのタイプ分けができる。

グラフが出来上がったらその形を、グループで見比べる。

 

 

●価値観は思い込み、自分次第で変えられる

今、折れ線グラフを作りましたが、これはライフスタイル診断と言います。ライフスタイルとは、アドラー心理学で、自分の価値観や対人関係の思考のクセ、行動のパターンのことを指します。今日は簡易版ですが、これだけでも、それぞれライフスタイルが全然違うことが分かります。価値観は違って当たり前で、どれくらい違うかに興味を示すことに意義があります。

もう少し詳しく説明すると、ライフスタイルは自己概念、世界像、自己理想の3つの信念で構成されます。これらは生まれたその日から決まっているわけではなく、すべて自分がどう見ているかという思い込みです。性格や価値観は凝り固まっていて、今更変えられないと思うかもしれませんが、アドラー心理学では、ライフスタイルは、自分が決めたその瞬間から変えることができるとしています。思い込みでできているのだから、自分で決めさえすれば書き換えができるのです。

簡易テストの折れ線グラフでは色々な形が出ました。では皆さんそれぞれのグラフの形はいつ決まるのかというと、大体10歳くらいだと言われています。この折れ線グラフを見て、自分の良いところは受け入れつつ、それを適切に使えているかを考えてみてください。適切とは自分のことも相手のことも考えた使い方で、不適切は自分本位で相手のことを考えられないような使い方です。ご自身はどちらの振る舞いになっていますか?そういう自分のクセを見直してみてください。

 

●勇気づけ – 困難を克服する力を与える

アドラー心理学は勇気づけの心理学とも言われています。勇気づけとは、一歩踏み出してやってみようと思えるように自分で自分を励ましたり、へこんでいる人に大丈夫やってみようよと励ましたりすることです。

人を育てる立場にある場合、相手を自分の思い通りにしようという下心を持っておだてて動かそうとしたり、あるいは叱って動かそうとしたりしてもうまくいきません。これはアドラー心理学のとても大事なポイントです。操作の下心を持ってコミュニケーションを試みても、相手との信頼関係は生まれないのです。

また親や上司が必要なことを教えるのは大事ですが、上から目線で、つまり施しという縦の関係で接するとそれもうまくいきません。

人を操作しない。立場の上下はあってもコミュニケーションを取るときは、フラットに対等な関係で接していく。これがアドラー心理学でとても大事にしているポイントです。

最初にお話したように、家庭でも職場でもコミュニケーションは「言う」と「聞く」の2つですが、その土台には相互尊敬、相互信頼、協調精神、共感という4つの態度があります。この共感についてさらに深く解説していきたいと思います。

 

●相手の関心に関心をもち、相手に思いをよせる「共感ファースト」

コミュニケーションはシンプルです。ほとんどこれで解決できるというパターンがありますので、まずこれに当てはめてみるということを今日から実践してみてください。

その前段階として、まず自分のライフスタイルをよく知っておきましょう。相手がどんなライフスタイルなのかも大事ですが、まず自分がどんなライフスタイルで、どんな主観で相手を見ているかをよく理解してください。

その上で最初に実践するのが、相手に共感してみること。これを共感ファーストと言っています。共感する上で一番大事なポイントは、共感と同意は違うということです。共感が苦手な人はここを混同し、モヤモヤしてしまいます。共感とは相手の関心に関心をもつこと。自分のライフスタイルや価値観は一旦横に置いて、相手のライフスタイルではどう見えているか、まるで憑依するような気持ちで心乗り移り、相手の心で感じてみるくらい本気で相手の立場で感じてみる。これが本当の共感です。

実際には誰と会話していても、「次にどう言おうか」「何を言ったらうまくいくか」など、頭にあるのは自分のことばかりで、全く共感できていません。表面上は、一生懸命聞いていても、これでは相手の心は開けません。なので、練習のポイントは、本気モードで相手に乗り移ること。もしかしたら、相手の行いに同意はできないかもしれませんが、相手に思いをよせるということをまず真っ先に実践する。ずれていたとしても、相手にそれが伝われば、今まで言わなかった本音を言ってくれるかもしれません。ですので、いきなり正解を見つけようと思う必要は全くありません。

 

<ワークショップ>

参加者の具体的な悩みを事例にして「共感ファースト」の練習。

事例①(職場)

コミュニケーションを積極的に取りたがらない部下。進捗報告が適切になされず支障をきたしている。

事例②(夫婦)

妻が他者の目を意識しすぎて決断を迷いがち。そういう妻にどう接すればいいのか?

事例③(子育て)

ネガティブな言動をとる子供に、どう対応するのが良いのか分からない。

 

*質問者の部下、妻、子供に共感ファーストするだけではなく、相手が心理的安全性を感じられるような声のかけ方、さらには質問者に共感ファーストしてみるなど、議論がさらに発展しました。また共感が難しいという意見がある中で、熊野さんからは、賛成はしなくても、そうしたくなる気持ちに共感するという切り分けが必要で、押し付けず、寄り添い、静かに見守ることが重要というアドバイスがありました。

 

ネガティブな言動を取る子供については、人間の行動には必ず目的があります。特に子供の行動の目的は「注目」です。子供は良い悪いではなくありのままの私を見てほしい。でもどこか自分のありのままを認めてもらえていないのではないかと疑いを持ち始めると、わざと不適切な方法で注目を得ようとします。これは典型的な子供の行動のパターンです。だからそういう子供には、ありのままのあなたを認めるという気持ちで接することが大切です。

 

●幸せの3条件

最後に、幸せの3条件は、自己受容、他者信頼、他者貢献。たったこの3つです。不完全でも良いのです。ありのままの自分を認める自己受容。信用ではなく信頼でお付き合いをしてみようという他者信頼。他者貢献は、自己犠牲ではなく、自分は誰かの役に立っている価値がある人間だと思えることが重要です。

この3つのポイントが揃えられるように、家族や職場で話し合い、助け合い、勇気づけをしてみてください。これがハッピーにつながっていくはずです。

 

―参加者の声―

・ちょうど仕事が立て込み、残業が増え、会社でも上司と合わず、その中で家庭もうまくいっていなかったので「共感」を学べ、役に立ちました。

・「共感」することの大切さが分かって良かった。自分の性格のクセもわかったので、改善していきたい。

・自分のスタイルを知ろう!で自分のタイプを知ることができたのは良かったです。

・具体的に困っている点をディスカッションできたのは良かった。

・共感と同意が異なること。完全に勘違いしていました。相手になったつもりで考える事から始めたいと思います。自分のライフスタイル、よくわかりました。

 

(アンケートより一部抜粋)

 

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