パパママサミット2019 開催レポート

パパママサミット2019

「パパの本音&ママの本音 ~新しい『わたしたちスタイル』を創り出す~」

<開催レポート>

 

令和元年11月30日13時30分~16時30分

 

東京ウィメンズプラザ所長からの、「パートナーがそれぞれ抱える葛藤を理解し合い、自分たちらしく家庭運営をしていくという意識を高めて、それぞれができることを具体的に考えてまいります」という開催の趣旨を含めた挨拶から始まったパパママサミット2019。

第1部は放送作家の鈴木おさむさんによるトークショーで、「父勉」と位置付けて育児休業を取られた貴重なご経験を中心に、仕事や結婚、妊娠から出産、子育てや、夫婦や親子の関係まで、非常に学びの多いお話を伺うことができました。

第2部は、「新しい『わたしたちスタイル』を創り出す」ヒントが満載のパネルディスカッション。パネリストは、トークショーに引き続き鈴木おさむさん、作家の白岩玄さん、毎日新聞社記者の長岡平助さん、株式会社グロービス ファカルティ本部研究員の浜屋祐子さん。また、モデレーターは、少子化ジャーナリストで数々の有識者会議にご活躍の相模女子大学客員教授の白河桃子さんで、実体験に基づいた「本音」ベースでの現実や、日頃から実践されている家庭運営のヒントが多数飛び出しました。

 

●第1部トークショー

<“ママにはなれないパパ”の『父勉』レポート ~鈴木おさむ生出演中!~>

 

放送作家として活躍中の鈴木おさむさんは、10年のキャリアを積んだ頃、パートナーである大島さんと出会い、今年でご結婚18年目。

結婚前は、お付き合いしても2年くらいで別れてしまうことが多かったという鈴木さんですが、大島さんとの生活は未来に起こることの想像がつかず、ドキドキワクワクされたそうです。パートナーへの「リスペクト」の大切さを実感されていました。

 

鈴木氏「脳科学的には、恋愛感情って2、3年で減っていくと言いますけど、一度リスペクトすると人へのリスペクトってなかなか減らないですし、なんなら蓄積していきます」

 

―「自分事」化と「妊活休業」ー

2度の流産を経験され、それまでどこか他人事だった「流産」を自分事として受け止めた鈴木さんご夫婦は、妻の「妊活休業」、夫の「精子検査」を経て、第一子を授かるに至ったそうです。

 

鈴木氏「当時「妊活」という言葉は世の中では全然メジャーではなくて、僕も初めてその時に聞いた言葉でした。妻がどこかで見てきて、「妊活休業って世の中に言おうと思ってるんだ」と言って。自分がそれを言うことで、「妊活」という言葉がもっと有名になれば、「不妊治療」で仕事を休んだり、肩身の狭い思いをしてる人の状況が変わるんじゃないかって」

 

―大島さんの妊活休業から現場復帰、鈴木さんの「父勉」―

パートナーが休業する中、「自分は何もしなくていいのかな?」「レギュラーのままで復帰を待ってくれているスタッフさんがいるから、大島さんを早く現場に戻さなくては」と思っていたという鈴木さんは、先輩に言われた「お前も作り手なら、子供が0歳から1歳になる瞬間を絶対家にいて見てたほうがいいぞ」という言葉をキッカケに、ご自身が「育休」を取ることを決意。

 

鈴木氏「番組のプロデューサー全員に報告に行くと、「また戻ってきてよ」と言ってくれた人が半分、やめることになった番組が半分ですね。あれから4年経って少しは変わったかもしれませんが、世の中の男性が会社を育休で休むことはなかなか大変だろうなと感じました。だけど自分がそれをすることで変わるんじゃないかって思ったんですけど」

 

ただ、義母が1か月いてくれたこともあって、意外と「やることがない」ことに気づいたそう。何をすべきか考えた時に、「子供が産まれると、お母さんの食事はふりかけご飯になっちゃう」という話を思い出し、ご飯好きのパートナーのためにも「家でシェフをしよう」と思い、料理を始めたそうです。そうすることによって、仕事ばかりしていて知らなかった旬の食べ物を覚えたり、仕事ばかりで自分が失っていたものを取り返していったりしたとのこと。

 

鈴木氏「ただ、妻はとてもキレイ好きなんですよ。だから、料理の後に僕が片付けると二度手間になるからやらないで欲しいと言われました。「これはやる」「これはやらない」というのを、明確に線を引きました」

 

パートナーが仕事復帰していく中で、結果的に増えていく父子二人の時間。最初は夫婦ともに不安だったそうですが、何度も父子二人きりの時間を経ることで、「何も問題ない」「大丈夫」という認識が夫婦間でできていったとのこと。

成功体験を積み重ねることで自信がつき、子育てに積極的になり、結果的に父子間の距離感も縮まったようです。

 

―子供それぞれの成長スピードと親のエゴ、親の「育自」についてー

子供が2歳ぐらいになった頃に、どうしても他の子供と比べてしまう自分に気づいたそうです。そんな中、重度の障害を持つ甥やその母である姉と接し、「人それぞれのスピード」を実感することに。人と比べたり、何をやらせたいと考えるのではなく、子供が自分のスピードで育つ環境を作ることが親の役目だと思うようになったそうです。

 

鈴木氏「自分を育てる「育自」とよく言いますけど、本当にその通りだなと思います。だから僕も妻も、これから子供を育てながらたくさんのことを学んでいきたいなと思います」

 

 

●第2部 パネルディスカッション

<パパの本音&ママの本音 ~新しい『わたしたちスタイル』を創り出すには~>

 

会場の皆様からの本音

東京ウィメンズプラザ主催「パートナーシップセミナー」の受講者や会場の皆様から寄せられた「パパの本音【ライフ】」「パパの本音【ワーク】」「ママの本音【ライフ】」「ママの本音【ワーク】」について、モデレーターの白河さんからご紹介がありました。(以下は抜粋)

     
     

パネリストの自己紹介

「子育て」「夫婦」の課題や、向き合っている問題などについて、会場の皆様の本音を振り返りつつ、4名のパネリストの皆様からお話がありました。

一人目は、2004年のデビュー作「野ブタ。をプロデュース」で第41回 文藝賞を受賞し、ドラマ化もされた作家の白岩玄さん。2歳の男の子がいる共働き家庭で、パートナーとは家事と育児を半分ずつ分担して行っているそうです。

二人目は、第1部で結婚生活やご自身の育休、子育てについて貴重なお話をしてくださった鈴木おさむさん。子育てにおけるパートナーとの「言った言わない問題」解消のために、LINEのノート機能など、SNSを活用して情報交換や管理などを行っているとのこと。

三人目は、毎日新聞記者として忙しい日々を過ごしながら、長女が産まれたのを機に計10か月の育児休業を取得された長岡平助さん。夫婦で同じ会社に勤務されているため、方便としての嘘もつけない一方で、家族についての情報共有などが社内でサッとできる利点もあるようです。

四人目は、株式会社グロービス ファカルティ本部研究員でもあり、同時に社外では子育てをしつつ働くことを応援する各種活動に取り組まれている浜屋祐子さん。男女二人の子供をお持ちで、当初はお一人で抱え気味だった育児を、次第に夫婦が一体となって取り組むように切り替えていったことで、夫婦関係にも、父子関係にも良い影響があったそうです。

  

モデレーターである白河桃子さんの進行で、いくつかの論点についてお話を伺っていきました。

 

論点1「パパの本音、ママの本音、ライフとワークの葛藤」

【白岩さん】

もともと育児に関してはそこまで積極的にやっていなかったという白岩さん。「たてがみを捨てたライオンたち」という小説を書く際に、「男のプライド」「男らしさ」について掘り下げるために、担当編集の女性や妻の意見やアドバイスをもらったことから、「いかに自分が分かっていなかったか」を自覚することに。

その後3ヵ月ほど父親業を率先して経験したことで、育児の「大変度合」を理解することができ、結果、妻と協力して育児ができるようになっているとのことでした。

 

【鈴木さん】

ご自身のブログに投稿されたメッセージを見て、「女性はお腹に子供を身ごもった時から母親なんですけど、男性は子供が産まれても、それは父親の権利をもらえただけなんじゃないかと思った」という鈴木さん。だからこそ、父親としての勉強すなわち「父勉」の必要性を強く感じ、「父勉休業」を取る中で、子供との関係性だけではなく、自分自身を見直す機会にもなったと言います。

「育児というのはまず自分が楽しむ」「(子供と)二人の共通点をたくさん作ることで、自分も楽しんで成功体験になる」と強く感じているそうです。

 

【長岡さん】

「育休」を取るに際し、「育休を取るなら大きな仕事を受けたら駄目でしょう」「責任を果たせるなら取ってもいい」「キミが取ったら、誰がその仕事をするの?」という意見が出てくることの多い現代日本の風潮について、「何故育休を取ってはいけないのか。それは仕事のほうが優先されるから?」「会社員が、自分が持つ権利を使うときに、なぜそこに責任が生まれるのか?」という問題提起が行われました。

 

長岡氏「「誰がするの?」って、それをマネジメントするのが上司だし、そもそもそういうことがあると認識した上で人事の差配をするのが経営者ですよね」

 

そんな時に、ご自身が念仏のように唱えている言葉を紹介してくださいました。

・逆風も感じなければただの風(万能川柳/小泉純一郎)

・刃の向けどころを間違っている(長岡平助)

・肩書は貸衣装(遠藤周作)

・いい奴ばかりじゃないけど、悪い奴ばかりでもない(THE BLUE HEARTS)

・妻は(子供が生まれて一番つらい時期に夫がどう接したかを)一生覚えている(辰巳渚)

 

「代わりのいる会社や社会に対し、家庭は夫がいないと回らない」という指摘が印象的でした。

 

【浜屋さん】

ご自身の著書である「育児は仕事の役に立つ」から様々なデータをご紹介くださった浜屋さん。

男女計400名を分析された結果、他者と協働して育児を主体的にやった経験は、職場でのリーダーシップ向上にプラスの影響を持つことがデータとして明らかになったそうです。

 

浜屋氏「育児を積極的に実践することは、業務能力だったり、他部門の理解の促進だったり、調整能力だったり、視野が広がったり、タフになったり、そういったことにもプラスの影響がちゃんと出ました」

 

また、日本では突然の用事の際の子供の世話について、自分や配偶者の親には頼むけれど、それ以外には頼まないという傾向が国際比較の中で目立つというグラフも。

さらに、0歳児の保育園の病欠が年間平均19日を超えるというデータからは、母親一人で対応することは絶対無理で、誰かと一緒にチームで育児を行うことの重要性がデータでも明らかになりました。一方で、5歳児では5日間になり、大変な時期が未来永劫に続くわけではないことが示されました。

 

論点2「折り合い」

続いて夫婦間の折り合いの重要性の他、夫自身の「「自分の男らしさ」との折り合い」についてディスカッションすることに。白河さんからの「それぞれの皆さんの男らしさ、新しい男らしさって何が求められるんだろう?」という問いに対して、各パネリストの「本音」をお話いただきました。

 

【長岡さん】

トップバッターの長岡さんからは「「男らしさ」という言葉が持つ意味が世の中に色々ありますけど、今一般的に言われている「男らしさ」というものは、本当に必要ですか?」「男だからとか女だからとか、そこがそもそもいらないんじゃないかなって」というご意見が挙がりました。

 

【白岩さん】

長岡さんと同じく、「僕もできるだけそういうものにこだわらずに生きていけたらいいなというふうに思ってるんですね」とおっしゃられた白岩さん。とはいえ「自ら男らしさから降りる」ことは難しく、降りたいと思った時に「それでもいいんじゃない」と言ってくれる存在、パートナーの必要性を実感されているそうです。

 

【鈴木さん】

一般的に語られる家族を船と乗組員に例える話を引用し、多くの人が「父親が船長」と想像しがちだが、実際には船長は「母親」なのではないかと指摘。現実は漫画などとは違い、主人公が男性というわけではない。「男は船を押す作業をする船員」「男は大したことない」ことを自分で認識することが大事で、それを認識することが男らしさなのではないか、と述べられました。

 

【浜屋さん】

「父性」や「母性」、「お父さんらしさ」「お母さんらしさ」というのは男女の差ではなく、役割によって発生している特徴に過ぎないのではないか、という見解を示された浜屋さん。ご自身の家庭では浜屋さんが仕事、ご主人が家事を中心的に行う「バトンタッチ」の時期なども導入しているそうです。

 

サイボウズ ワークスタイルドラマ「声」を踏まえて

サイボウズ株式会社が作成した、男女の「本音」のすれ違いを描いた動画を見て、白河さんから「このすれ違いをどうしたら止めていけるのか」について、パネリストに質問がありました。

 

【浜屋さん】

子供が小さい頃は、夫婦間で「不機嫌な均衡状態」に陥りがちだったという浜屋さん。一度本音をぶちまけてから、お互い積極的にコミュニケーションを取るようになり、次第にうまく回るように進化してきたとのこと。「自分の取扱い説明書を開示し合う」「自分の要望を伝え合う」「家事の基準を開示する」ことを意識し、すり合わせができない部分は割り切りつつ、手の内を見せ合うことによりうまくいっているそうです。

 

【長岡さん】

男性としては、「名もなき家事」などは気づけない部分も多く、そこは教えて欲しい、とのこと。また、家事は完璧を目指す必要はないこと、「時間」と「余裕」を生み出すためには、金で時間を買うことも一つの手段であるという、工夫の提案がありました。

 

【鈴木さん】

単純に話し合うことが重要、という鈴木さん。しかしなかなか本音を出し合うことができないという中で、妻が半年に1回ぐらい気持ちを爆発させることがあり、これによって「そう思っていたのか」と受け止め、理解ができる、という実体験も。

 

【白岩さん】

鈴木さんご夫婦とは真逆で、爆発せず黙り込むタイプのご夫婦だという白岩さん。「「どうしたの?」と聞いたときに、「大丈夫」という発言が出てきたら、それはもう大丈夫じゃない時」とお互いに理解しているそう。「大丈夫」という言葉の本意を見抜いて、すべての作業を止めてでも話し合いの時間を取ることにしているそうです。

 

最近の状況について

最後に、白河さんから最近の状況について、積水ハウス株式会社が作成した「イクメン白書」をもとに紹介がありました。平成世代にとってイクメンはもう常識で、意識は昭和の2倍になっています。1位は島根県で、日本の1日平均が約95分に対して、島根県の男性は平均2時間以上家事をしています。

白河さんが注目したのは、夫自身が思う自分の「イクメンポイント」で、3位に「家族のために我慢をする」が入っています。「妻がいろいろなことを我慢しているのと同様に、夫も幸せ、ハッピーだけではなく、家族のために我慢することが実は大きなポイント」と気づかれたそう。

同時に示された、ジェンダー平等の先進国スウェーデンのイクメンパパたちの絵もニコニコはしていません。

 

白河氏「苦しいこともひとつの人生なんだなと受け止めていただければいいなと思ってます。」

 

●パネリストからの提言

社会、職場、自分自身が変わるために何をすればいいのか、何を変えていけばいいのか

【浜屋さん】<弱みを見せる 弱みに耳を傾ける>

【長岡さん】<なさけは人のためならず>

【鈴木さん】<話し愛>

【白岩さん】<自分の家族に集中する>

【白河さん】<子育てスタートアップを ぜひ2人で!>

 

最後に登壇者揃っての写真撮影が行われ、サミットは終了となりました。

 

―参加者の声―

・夫にささったと思うので参加させて頂いて良かったです!

・パネリストの方々のトークを聞いていて、普段自分の中のモヤモヤしていることが、多少解ってきたと感じた。

・相手のことも考えようと思った。思うことはためすぎず、ちゃんと出す。具体的に指示。

・まず「育児は仕事の役に立つ」を夫婦で読みます。例え育休を夫が取れなくても、取れない社会、会社に対して疑問を持って欲しいです。

・男女というジェンダーにとらわれず、パパもママも等しく“親”であるという視点でディスカッションできるといいなと思いました。

・パネリストのそれぞれのご意見がすばらしく、共感できました。

 

(アンケートより一部抜粋)

 

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