「働く女性全力応援セミナー」開催レポート(第4回)

平成30年度働く女性全力応援セミナー

第4回「本音で話すキャリア~管理職になる前にやっておくべきこと~」開催レポート

平成30年10月20日(土)13時30分~16時00分

 

メンタルヘルス、お金のこと、家庭と仕事の両立、キャリアアップ…働く女性の悩みはさまざま。

そんな働く女性の悩み解決のきっかけになるよう開催された全4回「働く女性全力応援セミナー」も

今回が最終回!

今回のセミナーは、前半は大森亜紀さん(読売新聞東京本社生活部次長)の講演、

後半は大森さんのコーディネートのもと、3名の先輩管理職をお招きし、パネルディスカッションを行いました!

 

―“女性活躍” “女性が輝く”というけれど―

あなたは「女性活躍」という言葉を聞いてどんな気持ちになりますか?

うれしい気持ち?モヤモヤする気持ち?

参加者の皆さんは“モヤモヤする気持ち”と答えた方が大半でした。

その「モヤモヤ」の正体って何でしょう?

大森さんは

「 “女性活躍” 、 “女性が輝く”というけれど、日本の女性は本当に輝ける状況にあるの?」

と、考えているそうです。

その「モヤモヤ」につながる、いくつかのデータを挙げて頂きました。

◆世界経済フォーラム(※1)の男女格差指数(※2) 114位(144ヵ国中)(※3)

※1:世界情勢の改善に取り組む、独立した国際機関

※2:世界の各国の男女間の不均衡を示す指標。上位ほど平等である。

※3:2017年の結果

上位はアイスランド・ノルウェー・フィンランド、113位がギニア、115位がエチオピア。

この指標だけが絶対というわけではないけれど、「低い!」と思ってしまいますよね。

◆女性の管理職比率/役員比率 役員4.1% 部長相当職6.6% 課長相当職9.3%

安倍政権は2020年までに指導的地位(課長相当職以上)の女性の比率を30%にすると

掲げているけれど…。

徐々に増えてきてはいるものの、まだまだ男性社会ではないでしょうか。

◆夫の家事・育児の分担率(※) 家事14.9%、育児20.2%

※:平成25年厚生労働省調査による。夫婦合わせての家事を100%とした場合。

共働きの家庭の世帯数は専業主婦家庭の二倍なのに…。
  

最近、大森さんが取材した中では

「男性並みに仕事をして、家事もこなし、育児も担って、へとへと。それなのに、ダメな母親だと罪悪感がある」

「仕事は退職できても主婦の仕事に定年はない。介護や孫の世話、一生誰かの世話をするのが日本の女」

といった声もあったそうです。

日本の女性は頑張っているものの、置かれている状況は楽になってはいないようです。

―私が管理職に?-

22歳の時、日本の食を書く新聞記者になりたい!と読売新聞社に入社し、山形支局に配属された大森さん。

正社員として登用されて初めての取材は、山形自動車道のトンネル貫通式。

しかし、山の神は女性なので、“女性が山に入ると嫉妬をして事故が起こる“という理由から取材を断られ、

初めて女性差別というものを実感したそうです。

 

その後、大宮(現:さいたま)支局、東京本社、富山支局を経て、46歳で金沢支局長に任命されました。

任命された時は「なぜ、私が??」と、動揺しました。

なぜなら自分が管理職になるなんて全く思っていなかったからです。

大森さんが一番悩んだのは

「支局長という立場はいろいろな判断を下さなければならない。災害や事故の現場に取材に行くようにと言った、その判断が部下の命を奪ってしまう可能性もある。私にその判断ができるだろうか。」ということ。

不安にかられ、いろいろな先輩に相談をすると、「すごく管理職は楽しい!」「絶対やったほうがいい!」と口を揃えて言っていたそうです。そして、組織で働くのだから、一人ですべて決めると思わず、周りに相談したらいいという励ましも。様々なアドバイスを受けた中で印象に残っているのが「管理職は案外面白い」という言葉でした。

 

 

―管理職は案外面白い?ー

日々仕事の中で「こうやったらいいのに」や「上司の指示がよくわからない」と思うことはありませんか?

「管理職になるとそれを変えることができる。自分の中に不満を貯めて、“おかしいんじゃないの?”と思っているより、それを変える立場になれば見えるものも変わってくる。いろいろな人の不安を受け止めて、自分の不満を解消するには管理職が最適である」

と先輩に言われ、そのとおりだな、と大森さんは思ったそうです。

また、「ビジネスゲーム 誰も教えてくれなかった女性の働き方」という本に

「あなたは自分の仕事上の役割を恐れることはありません。ただ、それを『演じる』ことができればよいのです。」

とあり、

「上司はみんながみんな素晴らしい人格者でスーパーエリートというわけではない。だったら自分にもできるかもしれない」と思い、本の言葉、そして先輩方の後押しもあり、大森さんは支局長になることを決意したそうです。

 

―管理職の魅力とやりがいー

管理職の魅力ややりがいって何でしょうか?

大森さんは実際に管理職になって、いろいろな発見があったと言います。

「仲間や同僚とは違う、“上司”と“部下”という関係になって初めてわかったことがあるんです。例えば、管理職になったら査定があります。その査定で “この人は、自分の仕事ぶりをこんなふうに思ってたんだ”とか。それに、新卒の子たちの悩みや不安を直接聞いてアドバイスをするとすごく成長するんです。この立場でなければ、そういった場面に立ち会えなかったと思うと、すごく幸せだなと感じました。」

また、管理職になると、流れてくる情報の質や量が変わり、会社の方針が伝わってくるようになります。その中で自分はどう動くのか判断する、というのも面白さの一つだそうです。

“立場が変わると情報も変わり、人(部下)の人生に関わることで、人や組織の見え方も変わってくる。”

それはその立場にならないと見えない景色かもしれませんね。

 

―管理職になってもっとも気をつけた事は“ジェンダー・バイアス・トラップ”ー

(ジェンダー・バイアス=社会的・文化的性差別、あるいは偏見のこと。)

私たちは無意識のうちに「女性だから」「男性だから」と思っていることがあると思います。

大森さんが例として挙げたのはヒラリー・クリントンでした。

彼女はすごく有能なのに選挙で落ちた理由は、女性なのに笑っていない、冷酷に見えることだったといいます。

「『女性=いい人、お母さんのような人』というイメージがあります。あれだけ有能であれば、そんなに笑っていなくてもいいし、実績で評価されてもいいと思うのですが、『女性だから』というジェンダー・バイアス(日本語でいうと、いわゆる『色眼鏡』)で見られてしまったということです。日本だけでなく、世界的にもこういった事実があります。」

大森さんは「女性なのに」「女性だから」と思われないよう、自分の言葉にどう説得力を持たせるか、特に気をつけていたそうです。

「自分は『女性だから』『男性だから』ということで評価はしない。そう思っているけれど、まだ自分の気づいてないところでそういう思いがあるかもしれない」

とおっしゃっていましたが、“気づこうとする”行動自体がとても大事なのかもしれません。

 

―チーム作りのカギを握るのは…―

みんなの先頭に立って、リーダーシップをとるのが苦手だったという大森さん。

リーダーシップの形はいろいろなので、みんなの意見を聞き、働きやすい環境を整えていくようにしたそうです。

そして、その中で感じていたのは “できる人ほど報告・連絡・相談をする”ということ。

昔から言われる「ホウ・レン・ソウ」。

時代が変わり、リーダーシップや組織の在り方が変わっても、変わらないところもあるんですね。

 

―女性の歩み―

終戦後初めて女性に選挙権が与えられ、両性平等が憲法に明記されたのは約70年前。

そして今、世の中を変えようと女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)など、いろいろな法律ができています。

2020年までに指導的地位(課長相当職以上)の女性の比率を30%と、具体的な目標値もあり、

「女性」ということで声がかかる率も高くなると思います。

そういった中で、もしチャンスがあればためらわずにチャレンジしてみましょう!

悩んでいるのは1人じゃありません。世界中の女性が同じように悩んでいます。

 

―パネルディスカッションー

<パネリスト>

宇田 優香さん(日本生命保険相互会社 代理店業務部 エージェンシーマネージャー育成課長)

岡本 直子さん(C Channel 株式会社 執行役員 広告事業部本部長)

矢吹 直子さん(株式会社 松屋 総務部広報課 課長)

   

まず、各自のキャリアについての紹介がありました。

大森さん(以下、敬称略):会社での女性管理職育成の取組はあったんでしょうか。

矢吹さん(以下、敬称略):ここ10年ですが、女性も男性と同様に昇格試験を受けて、っていうのができるようになってきましたね。ただ『女性だから』という特別なものはないです。

大森:それまではあまり受ける機会がなかったのですか?

矢吹:雰囲気的に受けるという社風ではなく、結婚して辞められる方も多かったです。

今は育児に対する制度がどんどん充実してきたので、結婚、出産して辞めたという人は0%。制度の影響が

一番大きかったですね。

大森:かなり制度が変わってきたということですね。日本生命も同じですか?

宇田さん(以下、敬称略):そうですね、昔からあったというわけではなく、いろいろ制度改正があったりして、女性がキャリアアップすることは当たり前なんだよという気風をトップがつくってくれようとしているように見受けられます。

大森:岡本さんのところはいかがですか?

岡本さん(以下、敬称略):今の会社は、そういう(女性管理職を作ろうという)雰囲気はないです。

ただ、女性管理職の割合が充足されていないから、女性を管理職に入れるという話を

聞いて、それもなんか変だなぁと思いました。

能力さえあれば男女問わず、というのがあるべき姿だと思います。

大森:本来なら実力主義で男性でも女性でもきちんと評価されるべきですよね。やはり無意識の色眼鏡で、同じ

ことをやってもきちんと評価されないという点があるように感じますね。

では、管理職になって良かったこと、悪かったことを教えてください。

宇田:私は悪かった点から。自分が長くその部署にプレーヤーとしていると、部下たちよりもいろいろなことを否が応でも知っているがゆえに部下への当たりがきつくなってしまった。部下がやっている仕事を待つことができなくて自分がやってしまったり。

そうすると育たないし、部下も面白くないんですよね。そういう中でチームが上手くいってないということもあり、当時の社長に相談したところ、「山の登り方は人それぞれ。自分のやり方を信じてやりなさい。答えは現場にある。マーケットの方向さえ向いていれば失敗はしない。とにかくあなたはチーム員とマーケットの方を向いてやればいい」と言ってもらいました。そういった指導をしてもらい、実践することができ、そしてチーム員と一緒に成長していると感じられるのが非常に楽しいです。

大森:つい言っちゃうんですよね。私もそこがなかなかできなかったです。岡本さんはいかがですか?

岡本:人の能力はそれぞれ全く違うので、どう向き合って解決策を一緒に見つけていくのか、それが達成できた

ときに一緒に喜びを分かち合えるのが一番うれしいです。苦労と言えば、チーム内でいろいろな不満が出るので、それに向き合っていくこと。足の引っ張り合いにならないよう、リーダー(管理職)としてどうまとめていくかというところですね。

大森:矢吹さんはいかがでしょうか?

矢吹:良かったところは、いろいろなことを自分で決められて、いろいろな仕事をできるというところです。あ

と、仕事をする中での決裁が少なくなった、社内での交渉がしやすくなったという点で、チーム(部下)の

やりたいことを通せるようになったことです。一方、会議が多くなり、現場に出ることが少なくなったので、

内向きになりがちです。なるべく外に出ていくようにしています。

大森:本日のテーマにもなっている、「管理職になる前にやっておくべきこと」。なにかアドバイスなどはありま

すか?

岡本:時間があるうちに本を読んだり、人に会ったりしてインプットをたくさんした方がいいです。そうすると知識や言葉が豊富になります。表現をたくさん持っていれば「うまく伝えられない!」ということが少なくなるので、今のうちにそういった時間を作るのが良いと思います。

宇田:管理職になるということをあまり特別なことだと考えずに、今ある仕事に向き合っていくことが一番大事。目の前にあることを一つずつ積み上げていくとその先に管理職というものがあるのかなと。

「1.01の法則」って聞いたことがあるかと思うんですが、『昨日より今日、今日より明日』と、たった1%でも、一つずつ積み上げていくことが大切だと思います。

矢吹:迷ったら諦めないで貫いてほしい。社内に理解者を見つけて、人を巻き込む力を身につけてほしいと思います。とにかく今は前向きになんでもやって、壁にぶつかったらいろんな方向で考えて、実現に向けてほしいです。

大森:ありがとうございます。私からもやっておいてほしいことを3つお伝えします。まず一つ目は、何よりも健康であること。二つ目は社外のネットワークを作り、自分を逃がす場所を作ること。三つ目は事務作業を手早く、お金の管理など数字に強くなることです。

三つともとても大切なことなので、ぜひ心に留めておいてください。

    

―質疑応答―

参加者からの質問:キャリア形成を図る上で、家庭とのバランスが難しい(家事や家族との関係)。なにか転機になるようなことがあれば教えてほしいです。

宇田:割り切ることも大事です。私は仕事を19時には終わらせるようにしていて、部下にも伝えてあります。

あとはとにかく人の手を借りることも大事。私は気が合うママ友や民間学童保育を頼っています。

岡本:お互い忙しいので、結婚当時から家事は半々にシェアすると決めていました。相手に完璧を求めてしまうとイライラしてしまうので、完璧を求めないようにしています。掃除などは区のシルバーサービスにお願いしています。シルバーサービス等、アウトソーシングを利用するのも一つの方法だと思います。

矢吹:私は最近介護の問題に直面してきて、自分でやらなければいけないかなと思っていたのですが、やはり無理をしないで人の手を借りることが大事だと思います。親子はケンカになることもあるので、外部=プロに頼むことは悪いことではないと思います。

大森:日本は「家事・育児=愛情」というのが結びつきすぎているような気がしますよね。できないからと言って愛が足りないとは思わないのですが、そう見る方もいますよね。でも割り切って人の手を借りていくのもいいんじゃないかなと思います。

参加者からの質問:周りを巻き込んで自分の提案を実現していくことができず、悩んでいます。

岡本:収支やメリットをプランニングする能力は最低限必要。あとはぶつかることを恐れずに、「実現するんだ!」という強い想いを持っておくこと、そして想いを口に出すことはとても大事です。

矢吹:キーマンを見つけて相談していくことが重要かなと思います。

宇田:私も巻き込むことが苦手なので、そういったことが上手な方の行動パターンなどをマネするようにしています。

参加者からの質問:男性社員が多く、同じ業務内容でも男性の方が好まれることが多い。転職しようか悩んでいるのですが、会社が変わるのを待つ方がいいのか、自分の環境を変える方がいいのか、アドバイスがほしいです。

岡本:会社の中で、自分の得意分野の仕事をしたいという希望を伝えることは大事です。伝えた結果、何も変わらないのであれば、他の会社という選択肢を探してもいいと思います。まずは伝えることが大事だと思います。

 

―参加者の声―

◆それぞれの会社により管理職の内容、スタンスなども異なると思いますが、とても参考になりました。女性だからとあきらめずチャレンジしたいと思いました。

◆第一線でご活躍している方々から直接経験談を聞くことが出来て良かった。仕事に対する意識が高いことがまずベースにあり、仕事をするためにどうするかをよく考えていることがわかりました。

◆パネルディスカッションがとても参考になりました。色々な経歴の方なのでバラエティに富んだ内容で参考になることばかりでした。

(アンケートより一部抜粋)


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