「働く女性全力応援セミナー」開催レポート(第3回)

平成30年度働く女性全力応援セミナー

第3回「ワンオペ育児を解決しよう!エンジョイ♪自分らしい両立ライフ」開催レポート

平成30年10月13日(土)13時30分~16時00分

 

ひとりで家事・育児の大半をこなさざるをえない「ワンオペ育児」。

「ワンオペ」とは、ブラック企業の「ワンオペ」(ワンオペレーション=一人作業)が母親達の家事・育児の労働とそっくりなことから、ネットを中心に使われ始めた言葉です。

今まさにその状況で苦しんでいる人たちが一番知りたいのは、

「どうすれば解消できるのか?」という解決策ではないでしょうか?

今回は『ワンオペ育児 わかってほしい休めない日常』(毎日新聞出版)の著者で、明治大学商学部教授の

藤田結子さんをお招きし、自分らしく両立ライフを送るためのヒントを伝授していただきました!

 

―「ワンオペ育児」は当たり前?



共働き世帯が専業主婦世帯の1.5倍を超え、働く母親が増えているけれど、

家事・育児は母親の仕事のように思われています。

6歳未満の子供がいる家庭で、平日に家事・育児をしている男性の割合は2~3割で、

多くの男性が平日に家事・育児をやっていないというデータもあるそうです。

「パートで働く母親の場合、仕事と家事・育児の合計時間は、男性の労働時間とほぼ同じです。フルタイムで働く女性だと、仕事と家事・育児の合計時間は、男性の労働時間より長くなります。職場でミスをしないよう注意を払いながら、家では家事・育児をすべて一人でこなさないといけません。」というのが、今の日本のワンオペ育児の状況とのこと。

グラフを見ると、家事・育児の割合は妻の方が格段に多いことがよくわかります。



ひと口に「家事・育児」と言っても、たくさんの項目があります。

毎日やること、週に1回やること、年に1回しかやらないこと・・・

どのような「定期的な家事・育児」「不定期な家事・育児」があり、それを誰がやっているのか(「自分」か「夫・親・家事育児代行サービス等」か)を書き出してみました。

書き出した情報を元にグループで話をすると「そうそう!それが大変ですよね!」などの声が

聞こえてきました。

それぞれのご家庭で問題は違いますが、共感することが多いようです。

     

やはり、家事・育児の負担は母親に偏っている家が多いよう・・・。

「どうしてそうなっているんだろう?」と考えたときに、社会(会社)が、“長く働くのは男性” 、“育休・産休を取るのは女性”という考え方や仕組みになっていると藤田さんはおっしゃいました。

「いろいろなお母さんに調査で『女性が家事・育児をやるべきですか?』と聞くと、ほとんどが『No』と答えるんですけど、『子供や家族のために愛情をかけて家のことをするのは、母親がやった方が良いと思いますか?』と聞くとほとんどが『Yes』と答えるんです。そして、『ご飯を作ること=愛情』だと思い込んでいる人が多い。『ママの愛情たっぷり手作りケーキ』というのはあっても、『愛情たっぷりのお洗濯』とは言わないですよね?」という藤田さんの言葉にはっとした人は多かったのではないでしょうか?

愛情をこめて家事・育児をやるのは家族のためになると思っている人が多いのですが、だから「やるべき」なのでしょうか?

 

名もなき家事

子供のために、と思って家事をしている方が多いと思いますが、「家事」とはたくさんの種類があります。

炊事、洗濯、掃除、食事作り・・・そして名もなき家事です。

・名もなき家事(はっきりした名前がつかない家事)=食べ残しを冷蔵庫にしまう、ごみ袋をセットする など

藤田さんは「どうして多くの男性は名もなき家事をしないのか」ということをよく質問されるそうです。

理由は2つ。

  1. 名もなき家事に気づいていない

  2. 気づいているけれど妻がやってくれる(自分はやらなくていい)と思っている

分担しているつもりでも“つらい、負担が減っている気がしない”という場合、

分担を上手く進めるためには、夫がマネジメント意識を高める必要があります。

普段、夫は職場では部下に指示を出したり、自分で考えたりしているはずですが

家では、妻の指示を待つばかり。これでは、妻の負担がいつまで経っても減りません。

家事に対しても、本人に任せて、自覚をしてもらうことが大事なのです。

 

日本と海外の違い

女性は、男性よりも家事・育児に対する責任感が強いといわれています。

日本では、ワンオペ育児が主体ですが

欧米の場合は、キャリア女性はベビーシッターやハウスキーパーを頼むことが多く

中国では、祖父母に預けることが多いので、子育てがつらいと思っておらず、ワンオペ育児はないそうです。

また、タイでは父親がふつうに育児を行なっているとのこと。

アジアでは、お隣の韓国だけが唯一日本と似ていて、ワンオペ育児の問題があるそうです。

 

では、海外では普段の家事はどうしているのか?食事を例にみてみましょう。

イギリスの場合は、9割が同じ料理を繰り返すそうです。

日替わり定食のように、月曜日はカレーライス、火曜日はスパゲッティ…といった具合に。

フランスの場合は、美食家が多くて食事にもこだわりがありそうです。労働時間は週35時間と法律で決まっており、夜7時には大抵の家族は全員で夕食を取ることが多いのですが、平日の夕食はテイクアウトで簡単に済ませたり、外食も多いとのこと。

アジア圏内のタイやシンガポールでも、平日の夕食は屋台で食べたりと外食がほとんど。

“平日は外食などで簡単に済ませ、休日は家でゆっくり食事をする”ということが、グローバル・スタンダードのようです。

日本の食卓はどうでしょうか。

平日でも休日でも変わらず、おかずが3品以上出ているようなイメージ…。外食率も他国と比べると低いようです。

なぜそんなに手作り料理にこだわってしまうのか?

「子供のために、愛情をこめて食事を作らなければならない」ということでしょうか?

では、「子供のため」とは、一体何なのでしょう?

OECDの調査で、子供の学力を比べたところ、外食率の高いシンガポールなどより毎日手作り料理を食べる日本の方が下でした。

健康面でも、平均寿命を比べると、外食率の高い香港の方が日本よりも長寿という結果が出ています。

また、「手作り料理」が、学力や健康に作用している科学的根拠があるわけではありません。

そう考えると、「毎日きちんとした手作り料理」でなくていいのかもしれません。

 

―妻の負担を減らすためにー

戦前は自営業や農業も多く、祖父母や地域の方々に協力してもらって、みんなで子育てをしていました。

戦後、高度経済成長の頃から、専業主婦が増えたこともあり、家事を完璧にやることが当たり前という風潮が現代でも残ってしまっています。

しかし、これは当たり前のことではありません。

“家事を外部に頼むことに罪悪感を持たなくていい!”

“皆さんは、家事を頑張っている。これ以上頑張らなくていい!”

世の中の家事を頑張っているお母さん達に伝えていきたいと藤田さんは語りました。

 

家事・育児をする男性比率を海外と比べると

欧米では、3時間以上なのに対し、日本は1時間と短い調査結果が出ています。

子供は3歳までは母親と一緒にいたほうがいいと言われますが、

子供は母親とだけずっと一緒にいることよりも、父親との関わりや遊びが多い方が

社会性や自発性が発達することが最近の調査結果でもわかっています。

いろいろな人に接することが重要なのです。

 

 

お金と時間をかけて習い事を増やさなくとも父親の育児で

父親の行動

子どもへの影響

未就学児

父親の育児参加が多い

・3歳の時点で情緒的・社会的発達が良い

・子どもの非行が減る

・成人後に教育・経済的な業績が増える

父親との遊びが多い

・情緒性・社会性・自発性・独立意識が高まる

父親との関わりが多い

・友人ネットワークが広くなる

就学児

父親と接触時間が長い

・社会性が豊かになる

・自尊感情が高くなる

父親が習い事に関心を持ち、サポートする

・子ども自身の習い事における能力感が高まる

石井クンツ昌子『「育メン」現象の社会学』ミネルヴァ書房、2013年

 

また、夫が半日~1日子供の面倒を見ることで

妻の大変さが理解でき、夫の育児や家事の考え方、取り組み方が改まる率が高いそうです。

そして、一番は夫とじっくり話しあうこと。

なんとなく妻が産休、育休を取って…という流れの家庭も多いと思います。

今は、妻だけではなく、夫も育休が取れる時代です。短くてもいいから、ぜひ取ってもらいましょう。

たとえ、育休が取れなくても、上司に忖度せずに今の環境を細かく話し、状況を知ってもらうことで

早く帰宅できるような環境を職場で整えることが大事なのです。

 

最後に、自分が望んでいる分担になるためにはどうすればいいのか、グループ内でアドバイスし合いました。

 

 

 

 

 

 







―ワンオペ育児の解決法―

・考え方や習慣を変えよう(罪悪感を持たない、家事のレベルを下げてみる)

・誰かに頼ろう(祖父母、親戚、誰でもいいから頼る、頼ることは責任感がないことでない)

・代行サービスを利用しよう

(地域のサポートやシルバー人材センター、シッター、ハウスキーパー、宅配サービスなど)

・パパにまかせる(短くてもいいから妻の大変さが分かるように育休を取ってもらえるようにしよう)

・ママ友ネットワークを作ろう(誰か1人でもいいから、相談相手を見つけて孤独にならないようにしよう)

 

―参加者の声―

◆小手先の「家事分担」ではなく、マネジメントレベルで妻も夫も一緒に考える事で、共働きが「(家事・育児も仕事も)共″に”働く」ということになるのかな、と思いました。非常に勉強になりました。

◆聞くだけでなく、ワークの時間もあり、グループメンバーの話も伺えて良かった。最後の「近所でママ友がつくりにくくなった」のスライドとお話が、非常に腹落ちした。そうか、今日私が、この講座をうけようと思った背景にはこういう気持ち(近所でママ友がつくりにくくなった)があったのかもしれない。

◆ワンオペする必要がない事、データもまじえて説明してもらえて、社会的に理想のママを押し付けられていることが無理!と納得できた。グループワークで色んな話が聞けて、心がまえが出来た。いろんな年代の子を持つ方が集まっていたため、とても良かった

◆家事=愛情という思い込みが両立支援を阻んでいる。

◆家事の中でも料理(手作り)が当たり前ではない事に気が付いた"

◆ドラマ「逃げ恥」を活用した話がとても印象に残った。私自身も、家事食事を外部に頼ると罪悪感がありました。何かを手を抜く、いい意味にとらえることができると「いいです」と後輩に伝えたい。

◆ワークの際に色々な人の共働きの工夫(夕飯の時間に、子供の宿題対応を任せる)なども聞けて、とても役立ちました。

◆ワークが多く楽しく参加出来た。もやもやしているのは自分だけでないと気が付くことが出来た。「マネジメントを夫に任せる」などはすぐに実践してみたい。

(アンケートより一部抜粋)

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