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パネルディスカッション「東京のフツメンがイクメンになるために」

 

 田中和子さんによる司会進行の下、各方面で活躍されるパネリストの皆様から、社会学・男性学から見た男性の心理や行動、経営経済からのメリットについて、地域での男性が置かれた立場についてなど、多様な意見交換をいただきました。
 まずは司会の田中(和)さんから、イクメンになりたくてもなれない障壁について、東京ウィメンズプラザで行っている「パパの育児応援塾」、「働く女性の応援プログラム」でのアンケートの紹介がありました。
 受講者の皆さんは、イクメンになれない障壁について、以下のように感じているようです。



 アンケートの紹介後、田中(和)さんから1つ目のお題が提示されました。

<お題①>
「イクメン」は浸透していると思いますか?(していないなら、なぜ?)
-安藤さん
 10年前のイクメンという言葉もなかった時代に比べれば、育児をしない男性はもういないという意味で浸透はしていると思うが、悩んでいるパパがいるという意味では社会的には浸透していないと思う。

-カミュさん
 まだ浸透はしていないが、ゴミ出しや子供の送り迎えなど、子供を抱きながらのパパが増えてきたことを考えれば、変化は見られる。
 (アンケートにあるような)“昭和”に戻ることはないと思うが、むしろ江戸時代に戻ってもらいたい。江戸時代はお母さんができなかったことをお父さんがやっていた、イクメンパパだらけの時代。日本人のDNAの中にあるイクメンを呼び起こすことが必要。

-水無田さん
 イクメンという言葉は普及したが、生活実態とは合っておらず、女性から見ればまだまだ不十分。うちは共働きで育児をしてきたが、まだイクメンという言葉が普及する以前は夫が育児をやっていると周りの目がまだまだ厳しく、妻に逃げられたお父さんと思われることもあったようだ。
 イクメンという言葉から想起するイメージはバラバラで、家事も育児も仕事もできるスーパーマンダディを思い描いたり、父権の復権のような意味合いで語ったりする人もいる。

-田中(俊)さん
 言葉として浸透していることと、行動として浸透していることは別。長時間労働の改善なくして、家事・育児もというのは無理。イクメンという言葉だけで何かができるわけではなく、イクメンが登場すればお母さんの大変さを解決できると思ってはいけない。育児・家事をしなくてはいけないというのは社会の問題であるという、全ての人にとっての当事者問題であるという意識を持たせる言葉はないものか。

 

-青野さん
 まだまだ浸透していないと思う。こういうイベントがある時点で、まだ啓蒙期なのではいか。最近、働き方改革の講演依頼が企業からもよく来るが、企業によって温度差も激しい。

-安藤さん
 大義がないと浸透しないというのはあると思う。クールビズもそうだが、皆おかしいと思いつつもなかなか浸透しない中で、地球温暖化に対する「エコ」という大義ができたため、皆が一気にネクタイを外した。イクメンも同じように、「健康に良い」とか「老後に良い」などサステナビリティな大義ができれば浸透するのだと思う。
 ただ、子育て期間は限定的で、あっという間に終わってしまう。子供との蜜月期間は8~9年。その大事な時期に自分はどうしたいのか、自分でパパスイッチを入れないといけない。

-カミュさん
 日本のお母さんの家事・育児のレベルが高すぎて、お父さんがパパスイッチを入れても、家事・育児に参入できない部分もある。お父さんは単純だから、家事をやった後に褒めてあげれば、もっとお父さんは家事・育児に入っていけると思う。



-水無田さん
 どうしてそこまでやらなくてはいけないのかとも思うが、育児に対する要求水準が高いため、プレッシャーを感じてしまい、自分はできていないと思っている、自信のないお母さんが大勢いる。育児に関する考え方は、育児用品などにも反映されている。例えば日本では、育児用品は「育児スキルが高く手間暇を厭わない女性が使う」ことを前提にデザインされているが、共働き世帯には不向き。男性にも直感的に分かりやすく、使い勝手が良くかつクールなデザインの商品開発を心がけるなどの工夫が欲しい。男性の育児参加度を高めるには、総体的に現状の高すぎる育児水準をダウンシフトし、「適正化」する必要がある。

 パネリストから様々な具体的意見が出たところで、田中(和)さんから2つ目のお題が提示されました。

<お題②>
 東京で男性が“普通に”家事・育児を楽しむために欲しいモノ・コトは?
-田中(俊)さん
 色々な育児用品が女性向けに作られている。男性に合うサイズのエプロンがないし、柄も女性向けのものしかない。ベビーカーも押すには低すぎる。着てテンションが上がるエプロンや押しやすいベビーカーが欲しい。

-安藤さん
 20年近く前は男性トイレにおむつ交換台がなかった。そういうものを標準装備にしないと建築基準を通らないなどにすると良いのではないか。

-青野さん
 国民的アニメなど影響力のあるテレビ番組のお母さんがことごとく専業主婦で、男性が育児することが不自然になっている。それらのお母さんが皆働きに出てもらうと良い。
 サイボウズ株式会社では、「大丈夫」という約3分の動画を作成したが、いわゆる「ママ、ありがとう」的なものではなく、ママの大変な日常そのままの内容で、YouTubeで160万回再生されている。

 

-水無田さん
 「その育児は誰のためのものか」、ということを考えてほしい。育児のレベルが高くなっていて、パパが入り込めるレベルではないのでは。あえて言えば、それはママ同士の見栄の張り合いになっていないか。そうではなく、本来は自分のパートナーと協力しやすく、かつ子供のためにもなる育児を考えていかなくてはならない。

-安藤さん
 意識は変わって、育児をしたいパパも増えているが、結局は長時間労働の問題が横たわっている。育児休業を取ったほうが、会社にとっても、自分にとっても、子供にとっても、老後にとっても、全てにプラスになるという理解が必要。

-青野さん
 社会や組織から変えていかないといけない。よく育児休業を取りたいがどうすれば良いか、上司の理解を得られないがどうすれば良いかと聞かれるが、育児休業を取りたいなら気にせず取りなさい、育児休業を取ったということが将来の昇進につながる、上司に理解がないならそんな会社はやめなさいと答えている。

-カミュさん
 我慢することが素晴らしいという感覚を持ってしまうのを、違う方向に向けることができればポジティブなものに活かすことができるのではないか。会社のために頑張るのではなく、子供のために頑張ってみるというように。

 活発な意見交換がなされる中、田中(和)さんから、再び「パパの育児応援塾」、「働く女性の応援プログラム」のアンケートの紹介がありました。



 アンケート結果から、ママもパパも自分たちで社会の意識を変えていこうとしていると感じたという、田中(和)さんから3つ目のお題が提示されました。

<お題③>
 男性の“意識”、女性の“意識”はどう変われる?
-田中(俊)さん
 社会の意識は変わってきているとは思う。今日のイベントでも、会場に子供の声が聞こえていて、周囲もそれを受けて入れているように思う。

-青野さん
 サイボウズ株式会社には「リビング」という部屋があって子連れ出勤を認めている。男性が育児をすると働く時間が減り、会社が社会で勝てなくなると思われがちだが、全く逆。海外の会社では金曜日の午後はほとんど働いていないのに、そういう会社に勝てない現状がある。家事・育児をするということは、社会に触れるということ。社会に触れ、子供の医療や教育、地域の問題が分かって初めて社会で勝てる会社になる。そういう男性の意識の変革が必要。

-カミュさん
 第1子の場合は全てが初めてで手探り。分からないからやらないというのは駄目で、何でも自分からやっていこうという意識が大事。さらには周りの「大丈夫だよ。」という見守りの意識も重要。

-安藤さん
 人は承認されたいという意識があるから、ママを笑顔にするのは「頑張ってるね。」という言葉。「頑張ってね。」では駄目で、「る」が入るだけで肯定的になる。

-水無田さん
 「なぜ日本では子供を連れているだけで、お母さんは謝り続けなければならないのか」と聞かれたことがある。子供のために母親は全てを捧げなければならないという風潮がまだある。そういう状況で父親が育児に入っていく気にはなれない。長時間労働に生産性はなく、そういう職場環境も変えるべきだが、育児に対する要求水準が高すぎる窮屈な育児の場も変えるべき。

-安藤さん
 PTA会長を2年間務めたが、自分はこうしたいという気持ちで改革を試みた。最初の1年は大変だったが、周りの理解も得られて2年目は楽しかった。PTAをまとめることを考えれば、会社に戻った時、社内をまとめることなんか全然楽というメリットがある。
 皆の意識を変えるために必要なのは、メリットを含んだ正しい情報の伝達と、当事者意識を持って楽しんでいる笑顔のお父さんたちのロールモデルをどう可視化するかということ。

-カミュさん
 仕事も育児も、生きるということ自体において「楽しむ」ということがすごく大事。自分が楽しんでいれば、周りにも伝染するし、楽しんでやらないと続かない。

-田中(俊)さん
 (上司を動かすには)こうしたらこういういいことがある、という当事者意識は大事。上司にとっても、部下のために職場環境をよくするという「他人のため」ではなく、部下よりも早く来る自分自身の老後のために、働き方を見直して、余暇を作り、趣味を作ることは利益があると分かれば、当事者意識を持つこともできて上司の意識も変わるだろうと思う。

 

-安藤さん
 過去の働き方や専業主婦モデルを否定はしないが、成長社会ではなく成熟社会になっている今、時代にあった新しい仕組みに変えていかないといけない。「幸せのものさし」を変えなくてはいけない。昭和時代の「幸せのものさし」とはもう違うと思う。

-カミュさん
 今まで、お父さんは背中を見せて育てるという時代もあったが、今は胸を見せて、笑顔を見せて、楽しんでいるところを見せて育てるべきだと思う。

-安藤さん
 会社もそうだが、今、管理職になりたがらない人が増えているが、それは上司がつまらなさそうにしているから。だから、イクボス研修ではまず上司から連続休暇を取ってください、とお願いしている。休暇を取ることはマイナスじゃないということを伝えている。

-水無田さん
 年間平均18日間ある有給休暇で日本の取得日数は8.6日。お盆休みを取得するためにすら、周囲の状況をリサーチして根回ししてというように、休暇を取る労働者自身がコストを掛けなければいけない現状がある。有給休暇ひとつ取っても、完全に取れるようになれば、変わっていくと思う。

-青野さん
 日本の有名企業の社長も変わってきている。かつて、「ブラック企業の何が悪い。」と言った社長も最近では残業を減らす方向に舵を切っているし、休みは正月の朝しか取らなかった別の社長は今ではなるべく休暇を取るようにしている。グローバル化が進んで、日本の働き方が徐々に通用しなくなっていることを理解し、働き方改革を行っている。

-安藤さん
 日本の企業は岐路に立たされている。このまま根性論でいくのか、グローバルスタンダードに寄っていくのか。

-水無田さん
 アメリカのお弁当は、食パン2枚にバターとジャムを付けて終わり。それに比べて日本は、諸外国の人から見れば「芸術品!」と言われるほどのお弁当を毎日作るのが当たり前とされている。育児に関し、母親に求められる要求水準も、日本は先進国で一番高い。会社だけでなく、育児の現場もグローバルスタンダードに寄ってほしい。働き方改革をするなら、暮らし方改革もしてほしい。

-カミュさん
 フランスでは子供が生まれたら、必ず2週間の休みを取らなければならない。日本もそういう制度にするのもひとつ。
また、食育でいえば、家族で食卓を囲めばそれ自体が食育になる。その中で箸の持ち方や何を食べたほうが良いのかなど、十分に学ぶことができる。

-安藤さん
 昔はお父さんが食卓にいた。お父さんは「社会のウィンドー」として食卓にいて、ニュースを観ながらぶつぶつ言っているだけでも、子供はそれを聞いて社会のことを学んだりする。

 

 3つのお題についてのパネルディスカッションはここで終了しました。

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