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基調講演「男が家事・育児、いいじゃないか!」

 基調講演でご登壇いただいたのは武蔵大学社会学部助教の田中俊之さん。
 「男が家事・育児、いいじゃないか!」と題してご講演いただきました。

 始めに、まだまだ「男性は仕事中心」というイメージがある中で、なぜ上手く家事・育児に参加することができないのか、また、積極的に参加していくためにはどうすれば良いのかについて、ご説明がありました。

-かつて、日本で専業主婦の割合が最も高かったのは1970年代。高度成長期から1970年代にかけて「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業が一般的に普及していきました。しかし、その後の経済成長の減速という社会的背景から、これからは「男も女も、仕事も家庭も」という時代になっていきます。
 そのため、男性の働き方、暮らし方の見直しが必要になってきました。では、どのような見直しが必要なのか。長時間労働を見直すことによって、例えば、6時に退社して、家に7時に着けば、子供と一緒にご飯を食べることができます。5時に退社して、6時に家に着けば、子供と一緒にお風呂に入ったり、ご飯を作ったりすることができます。
 ところが、定時退社に皆が違和感を持ってしまう現実では、それは難しい。それどころか、男性が毎日定時に帰り、土日もしっかり休み、育児休業まで取ると、残念ながら周囲に心配をされてしまいます。周囲が安心する状況はどうしても、男性が一生懸命働くということになってしまいます。
 男性が家事・育児に積極的に参加できるようにするためには、その「男性は一生懸命、忙しく働くもの」という考え方や意識の部分を見つめ直す必要があるし、それが唯一、今すぐ変えられることです。

 

 その後、約40年間続いた「男は仕事、女は家庭」の状態から「男も女も、仕事も家庭も」に急激にシフトしていく大きな転換期において、社会が対応できていないという問題を、第1子出産後の女性の就労経歴や都道府県別合計特殊出生率、待機児童数の推移、保育所等利用申込率の推移や待機児童の保護者の状況の資料により、指摘されました。

 さらに、その社会が抱える問題に追加して、私たちが意識して変えていける問題についても、社会学の観点から説明がありました。

-1つはジェンダーについて。ジェンダーとは男性はこうあるべき、女性はこうあるべきというイメージ。例えば、服装で言えば男性はズボンを履くべき、女性はスカートを履くべき、というようなことであり、行動で言えば男性は積極的であり、女性は消極的である、ということ。これは一人一人の心掛けで変えることができます。
 また、「男も女も、仕事も家庭も」というキャッチフレーズの下、共働き世帯が増えていく中で、人々が同類婚をすると、実は世帯収入の格差が広がってしまうという問題が起こることも知っておかなければなりません。同類婚とは、年齢、学歴、階級、宗教などが類似した人同士が結婚することで、人は基本的には同類婚をする傾向にあります。一方で、それらが異なる人同士の結婚を異類婚と言います。
 世帯収入の格差が広がらないためには、同類婚以外のペアが出てくることに期待をするし、それに対して、周囲の人が違和感を持たないことが重要です。そのために今すぐできることは、やはり私たちの意識を変えるということで、それは男性と女性の関係を対等にしていくということであると考えます。
 つまり、女性が男性を立てて、社会が上手くいっているという状況を変えなくてはなりません。実は、調査をすると、男性は女性に立ててもらっているという意識があまりないため、もっと、女性にお膳立てしてもらっている、楽をしているということを自覚しなくてはなりません。家事・育児は実際面倒な仕事であり、それを女性任せにするのはどうか、という意識をしっかりと持って、その状況を変えようとしなければ、「男も女も、仕事も家庭も」というふうに転換するのは、難しいだろうと思います。
 要するに、男性はこういうふうに行動している、女性はこういうふうに行動しているというパターンについて、意識して変えようとしなければ、社会の転換は上手くいかないだろうと思います。

 

 最後に、具体的にどう意識を変えれば良いかという3つのポイントをお話しいただきました。

●お父さんが家にいても不安にならない。
 これは男性の価値観、働き方が変わるために大変重要な意識だと思う。平日の昼間に、大学を卒業して以降、定年退職する前までの男性が街をぶらぶらしていると、それだけで「あの人何か怪しいんじゃないの?」と思われてしまう問題を、男性学では「平日昼間問題」という。女性が今まで担ってきた家事・育児を男性が主体的に行うのであれば、男性が会社から地域や家庭に帰ってくるということであり、そのことに違和感を持たないよう、社会全体の意識の変革が必要である。

●夫婦で自分たちがどのような生活をしたいのか考え、やるべきことをそこから俯瞰する。
 まだまだ個人の意識や社会の評価が仕事中心になってしまっている現状を変革しないといけない。男性が仕事でしか評価されないことも問題である。あくまで、生活(人生)の中に家族があり、仕事があり、友達もあり、趣味もある。重要なのは、仕事か生活かということではなく、自分たちがどういう生活(人生)を送りたいか、家族の生活をどうしたいか、どう生きたいのかを第一に考え、意識しなくては、仕事中心の発想はなかなか抜けない。

●イクメンとは家事・育児と仕事を簡単にこなすスーパーマンではない。当事者として両立の大変さを素直に表現できる父親のことである。
 イクメンとは、家事・育児に対して当事者意識を持つことのできる人のことであり、当事者として家事・育児をやってみて、その大変さを痛感し、愚痴を言える人、その上でその大変さに主体的に向き合える人のこと。家事・育児も仕事も両方、楽々とやるなんてことはできない。「男も女も、仕事も家庭も」という社会に転換していく中にあって、男性は家事・育児で直面する大変なことや感じる矛盾を、もっと共有し合い、情報発信をしていき、かつ当事者として主体的に家事・育児に向き合い、何が大変なのかをしっかりと理解し、どう改善していくのかを考えていくことが大事である。

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