起業女子全力応援交流会              平日クラス第2回開催報告

 平成28年2月9日(火) 10:30~12:30
  当日の流れ
   -ゲストトーク ここるく 山下真実さん、マドレボニータ 吉岡マコさん
   -ワークショップ「小さくてもおもしろい仕事をつくってみよう」
   -未来へ踏み出す決意表明

 起業女子全力応援交流会平日クラスの2日目、25名の参加者が集まりました。前回から1週間、その間グループメールを使った宿題のやりとりでコミュニケーションを取りました。宿題は「やってみたい事業をとことん自由に描いてみよう」というテーマ。実現の有無は考えず自由に“妄想”してくださいとの呼びかけに対し、皆さんそれぞれ自由に“妄想”し、イラストなども交えて、熱い想いを描いてくれました。

 宿題を提出しての感想を聞いてみると「やりたい事業を描き切って、想像がもっとふくらんだので、話したくなった」「“妄想”を広げようとしても、つい深掘りしてしまい、自分の思考の癖がわかった」「皆さんの宿題を読んで“妄想”が広がった」「表現するのは恥ずかしかったが、言ったからにはやらなくてはと思った」など、参加者同士で思いをシェアすることで新しい気づきがあったようです。

 平日クラス2日目のテーマは、「革新的なモノやコトはどうやって生まれるのか」。ゲストにお迎えしたのは「ここるく」の山下真実さんと、「マドレボニータ」の吉岡マコさんです。

               

 山下さんは、2年前から「ここるく」という新しい子育て支援サービスの会社を始めました。
 大人の女性が一度入ってみたいと思うような素敵なレストランなど、子連れだからと利用を諦めているお店と提携して、託児付きで利用できるサービスを提供しています。昨年、日本商工会議所主催の第14回「女性起業家大賞」で、最優秀賞を受賞されました。

 山下さんは語ります。

− この写真は、4歳になる私の娘です。彼女の存在は、99.9%、純粋に未来への可能性でしかないというのを、毎日子育てをしていて実感します。子育てこそ、未来に直接手をつっこんで、未来をかえていく、未来に影響を及ぼしていくものだという感覚がすごくあるんです。

 この娘のために何でもしてあげたい。心底そう思っているんですが、自分がとっても疲れている時とか、とっても嫌なことがあった時とか、想いがあってもその想いが出せない時がある。親の心を安定させるということは、子供との向き合い方を安定させることとイコールなんです。

 今の日本の都市部では、いろんな外部要因、家庭内の要因で、母親が自分の時間を持つことがものすごくハードルが高いものになってしまっています。お母さんが耐え抜けばいいかというとそうではなく、子供にネガティブな影響が出てきちゃうんです。どんな人でも、どんな性格の人でも、心が広いとか、強いとか、弱いとか、あんまり関係なくって、環境によるものが子育てにはすごく作用すると思う。都心の子育て環境が、母親だけにとどまらず子供にも影響を与えるというのを見てしまったら、何かやらなければと思いました。

 “自分の時間”というのは、自分の好きな所で、好きな友だちと、好きなことをするってことなんです。それがいかにハードルが高いか、私は自分の産後に気づいたので、そういう所にぜひ行ってもらおうと今の事業を始めました。

 ただ、そこに行く過程で子供が犠牲になるのは、本末転倒。お母さんが好きな時間を持つのであれば、その間、子供は快適な、子供本位に過ごせる環境を担保するために、あえて託児付きにしています。

 これまで行きづらかった、高級レストランとかエステサロンとか、ダンススクール、フラワーアレンジメントとか、そういう空間は子連れで行くと楽しめないし、変にイライラしちゃう。そういう所と積極的に提携し、店内の個室などを利用して、託児のスペースを確保し、弊社から「だっこママ」いう愛称の保育者を送ります。そしてお母さんに外に出てもらって気分を変えてもらい、愛情をどんどん子供に注ぎやすいような状態に心をほぐしてもらうんです。こうして子供の時間と大人の時間を両立できるようにしています。

 起業をする前は、金融コンサルで仕組みづくりを職能として鍛えてきました。それも今の起業につながっていると思います。 −

               

 吉岡さんは、NPO法人マドレボニータを設立し、産後のボディケア&フィットネス教室で、出産した後の女性の心と身体のためのエクササイズやセルフケアのプログラムを提供する仕事をしています。

 吉岡さんは語ります。

− “マドレボニータ”とはスペイン語で「美しい母」という意味で、母となったからこその美しさ、人間の光も闇も含む深みのある美しさを追求したいという想いから名付けました。

 なぜこの事業をやっているかという社会的背景から話をすると、出産って、祝福イメージがありますが、笑顔だけで済むものではなく、環境は激変するし、実はいろいろなリスクを抱えていて、おめでとうだけでは済まないことがたくさんあるんです。

 私たちは産後の混乱危機を3つあげています。1つめは産後鬱です。ほとんどのお母さんが精神的に何かしらしんどい思いをしながら子育てをしているんです。赤ちゃんが生まれたら自動的にハッピーになれるというのは幻想です。2つめは夫婦の不和です。子育てに悩んでいるより、夫婦関係について悩んでいる人の方が多いくらいです。3つめは、乳児虐待です。

 実はもうひとつ重要な問題があって、30代、40代の女性の就労率が、他の先進国に比べて、ぐっと落ちてしまっていることです。それは、出産後の体調や環境が整わないため、働きたいという意欲が削がれてしまうからです。

 なぜこれらの問題が解決しないのかというと、産後に起こることと、その対策を知る機会がないからです。お産のことと育児のことは教わるけど、産後のことは教わらない。適切な産後ケアの情報提供と機会提供がされているかといえば、まだまだされていないのが現状です。そのため産後の女性だけじゃなくて、パートナーといっしょにできる講座にも力を入れています。

 お配りしたリーフレットは「妊娠中~産後の過ごし方ガイド」です。母子手帳に印刷されることを目指しています。産後1か月はちゃんと休む「休むためのケア」、2か月から6か月はエクササイズをしたり、出かけたりする「取り組むケア」。こういう知識を知らせていくということもやっています。

 私は、大学院生の時に出産しました。出産が身体に与えるダメージを身をもって体験するのと同時に、その現実を知らずに産んだことにすごく衝撃を受けました。皆こんな状態で子育てしていることに、びっくりしました。「私は耐えられない、リハビリする方法があるはずだ」と思い、まずは自分を実験台にして、産後リハビリ用のプログラムを作りました。

 この時の子供は今、高校3年生です。よく、このくらいの年齢になると、お母さんとしゃべってくれないと言うじゃないですか、でも、うちはすごくしゃべるんです。なんでかと言うと、私が、子供の世話をするだけの存在じゃないからなんです。自分のアイデンティティが“お母さん”というだけじゃない、自分の問題意識を形にして、社会に貢献する人として、人間としての軸があるから。母親が、“世話をする人”という存在だけであれば、いずれ必要なくなってきちゃうんです。世話をするという存在以外の、子供に向き合う、かたわらにいるということが大事だと思います。 −

               

 マドレボニータのクラスに参加したこともあるファシリテーターの和泉さんも、「クラスに参加して、自身の体験として本当によかった。妊婦の時は大切にされていたけど、母になると強くならないといけない、これからは自分を鍛えないといけないんだと、マドレに通った時にスイッチが変化した瞬間がある。」と実体験を語ってくれました。

 お二人の話を聞いた後は、ファシリテーターの自由大学 和泉里佳さんを交えた質問セッションを行いました。
 「ひらめきやアイディアを事業にする、そのために必要なことは?」
 「始めからうまくいきましたか?」
 「うまくいかなかったとき、突破するブレイクスルーになるヒントは?」
 「大切にしていることはなんですか?」
 参加者の皆さんからはこんな質問も。
 「人を上手に巻き込んでいくためのポイントは?」
 「子供がいる中、どうやって時間を作っていますか?」

 一つひとつの質問に、丁寧に真摯に向き合ってくださったお二人。
 お二人の話から繰り返し出てくるキーワードは、「ニーズを掘り切ること」「ビジョンをいかに描けるか」「自分の信念で試行錯誤していく」「多様性を認め互いに助け合えるようなコミュニティ」「発信することで共感する人が集まる」「起業は自分でライフスタイルを作れる子供との時間を大切にできる働き方」など。お二人の話には、ビジネスモデルより大切なものがあるというメッセージを感じました。

 そして、ここからは「小さくても面白い仕事を作ってみよう」というテーマでのワークショップ。4、5人のグループになり、知恵やリソースを出し合って、小さくても面白い仕事をあれこれ考えてみようというものです。

    

 参加者は3色の付箋紙に「あまっているもの」「困っていること」「提供できるスキル」をどんどん書き出していきます。付箋にでてきたリソースを集めて、ここから何かできないかをグループで考え、模造紙に書き込んでいきます。

 でき上がった「小さくてもおもしろい仕事」をグループの代表者に発表してもらいました。

    

 実家の空き家を活用した「ぐんまくらしのミュージアム」、夜のひとり時間をつかった家事シェア「みんなの夜なべラック」、美しくみせる、人にみせる片付け「魅せる」など、30分という短い時間の中で、どのグループも個性的なサービスができあがりました。

 2日間のクラスを終えて、最後に、参加者ひとりひとりに、未来へ踏み出す決意表明をしていただきました。

    

 「発信することを怖がっている自分に気付いた。大切だと思うことを発信していきたい」「小さくはじめるとこからやっていく」「自分に嘘をつくのをやめる」「できない理由を集めるのをやめる」「子供のことばかりで、自分のことを話す機会なかったが、これからは自分自身のことを話す場をつくりたい」

 参加者の皆さんに、熱い想いを語っていただき、なかには溢れ出す想いに言葉をつまらせる方もいらっしゃいました。

 最後に、ゲストとともに、まとめの時間。

 「あなたにとって働くとは?」の問いに対し、
山下さん「私にとって働くとは、生きることと同義です。働くことで自分を高め、人間というものの畑を豊かにしていき、私という畑から子供たちに与えられるものをより豊かにしていくためであり、子供のために働いていると言っても過言ではありません。」

吉岡さん「私にとって働くとは、社会に居場所を持つことだと思っています。仕事をしていなければ、社会と繋がるには消費を通してしか繋がれず、すごく窮屈です。自分の持っている力を発揮して、社会に居場所を持つということは、人権問題だと思っています。すべての人に保障されるべき機会、それが働くことだと思っています。こういった女性がエンパワーメントされる場があって、それをきっかけに1歩踏み出すことができると、その姿を見て子供たちは大きくなるので、30年後には変わってくると思います。」

 参加者の皆さんからは、「仲間と何かを考えることの楽しさを学べた」「子育て中の素敵な女性にたくさん出会えたことが本当によかった」「ゲストの方の自分を信じる力が印象的だった」「起業の根っこにあるものを見させていただいた」という感想をいただきました。

 次回は、2月13日(土)平日・土日の両方のクラスのメンバーとゲストで合同交流会を行います。

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